会長からのご挨拶

日本家庭科教育学会会長 荒井紀子
今期(2017-2018年度)の会長を拝命いたしました。日本家庭科教育学会の60年の歴史と蓄積を引き継ぐとともに、これからの家庭科教育を見据えながら、副会長、理事、そして全ての学会員の皆様と一緒に、家庭科教育の深化と発展、そして研究や実践の一層の推進と発信にむけて、活力ある学会の運営に努めていきたいと存じます。
家庭科は、戦後の民主的な平和国家を目指す教科、とりわけ民主的な家庭建設の担い手を育てる教科として1947年に誕生しました。本学会は、その10年後に家庭科研究の充実を目指して設立され、学会誌発行のほか、数々の書籍の刊行、児童・生徒や教員対象の全国調査の継続的実施などを通して、研究成果とともに、教科の重要性や魅力を発信してきました。
2018年度には、小学校から高等学校までの学習指導要領の改訂が終了し、家庭科学習が新たな局面を迎えます。
そのことも踏まえ、今期は、これまでの学会活動の継承とともに、これから10年の家庭科教育の充実、発展を見据え、特に以下の点を重視していきたいと思います。
まず、家庭科の学力に関わる理論研究とその発信についてです。子どもたちの生活離れが深刻化する中、学校教育において、子ども自身が衣食住の生活全体に目を向け、生活を自立的に営む力、人と助け合い共に生きる力を培う教科は、小、中、高等学校を通して家庭科の他にはありません。家庭科の目標は、生活の知識・スキルを活用し、生活の質(ウェル・ビーイング)を高め、生活の課題を解決する力をつけることであり、その意味で、学校教育の目指す「学力」(活用力、思考力・判断力・表現力、問題解決力)の中核に関わっています。短期的な視野での「受験力」ではなく、生涯にわたり「活きてはたらく」力の獲得を目指す教科です。また、衣食住や家族、福祉、消費、環境、家庭経済など、個人と家族の「生活」に関わる内容を包括的に含んでいます。このことは、子どもたちが、生活を断片としてみるのではなく、暮らし方を多角的にとらえ、生活の主体(生活主体者)として、何を大切にするのか考えることを可能にします。手と体を動かし、体験し、工夫し、考える、これらを無理なく連動させ、よりよい生活形成につなげていく、まさに実践的な生活哲学としての教科であります。これらは世界に誇る日本の家庭科の優れた点であり、同時に、「18歳選挙権」の施行に当たり、「生活を大事にする」市民性(citizenship)を育てる役割を担っているともいえます。
また、2016年度に学会特別研究委員会が実施した社会人対象の全国調査によると、高校家庭科を男女必修で学んだ世代は、それより上の世代に比べて、協力して家庭を営むパートナーシップ意識が高いことが明らかになっています。これからの男女共同参画社会を支える意識や実践力の涵養に家庭科の学習が関わっていると考えられます。
これらの家庭科の特質を教育全体に位置付けるカリキュラムの研究、生活主体を育む授業の実践的研究、さらにそこで育つ生徒たちの実像について、研究成果を積極的に発信していくことが重要です。
その一方で、家庭科を取り巻く状況は厳しさを増しています。家庭科は、実習を伴う必修教科であることに加え、地域社会との連携・交流や文化祭での活動など、学校文化の一翼を担う教科であり、専任教師の配置は不可欠です。にもかかわらず、「受験教科」でないことにより、非常勤講師や他教科担当者による授業担当の割合が増し、教科の充実に重大な支障が出ています。専任教師の配置、授業時間の増加、充実した教員養成の継続など、家庭科教育を支える環境や授業の質の確保について、理論的、実証的な研究をもとに、抜本的な改善を提案していくことも、学会の重要な使命と考えます。
会員の皆様の自由で活発な議論や研究活動の広場として、また研究発進の基地として、本学会がより一層機能することを願っています。皆様の更なるご協力と積極的なご参加をお願いいたします。

2017年度 学会活動方針ならびに事業計画

【活動方針】
  1. 研究活動の充実
  2. 家庭科をめぐる諸問題への対応
  3. 学会組織の円滑な運営
【事業計画(上記との関係)】
  1. 大会・例会の開催(,供
  2. 学会誌等刊行物の発行(,供
  3. 家庭科の理論研究および実践研究の推進(,,掘
  4. 研究の奨励及び研究業績の表彰(機
  5. 内外の関連学協会との連携及び協力(,供
  6. 学会活動の目的を達成するために必要な事業(掘
  7. 60周年記念誌発行(,,掘
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